トーキン★カフェ

カフェライター・山村光春さん
●なるほど。それでこの「カフェをはじめたくなる本、カフェをやめたくなる本」という本の話になるんですが、この本に出てくる「デザートカンパニー」、もう今はないお店なんですけども、このお店が「カフェグランプリ」スイーツ部門の一位になったんですよね。デザカンとはその時からのお付き合いだったんですか?
■そうですね。このお店の方とは取材で知り合いました。
●この本を出版されるにあたってそのキッカケといいますか、というのも僕すごくセンセーショナルな本だったんじゃないかなぁって思うんですよ。僕なんてまずタイトルで衝撃でしたから。(笑)今ちょうどカフェブームが来始めた頃にいきなり「やめたくなる本」ですからね(笑)。この本を出す流れっていうのはどんな感じだったんですか?
■「デザートカンパニー」はオープンして約3年の間走り続けてきたんですけど、いろんな事情があってやめる事になりました・・・という、そっから始まってるんですよね、話は。で、その集大成的に本を作りたいと塚本さんというオーナーの方がずっと考えていらっしゃったんですね。最初は「こんなカフェがあったよ」という記念碑的なものを作りたいって話だったんですが、僕の方に話がきて企画もいろいろと話をして、その課程の中でそこに切実なドラマっていうかそんなのがあったんですね。もうただのキレイ事じゃない、カフェっていうのは夢を売るようなところでもあるけど現実は大変だったりとかね。経営がかんばしくない時はそれなりの悩みがあり、うまくいったらいったなりの難しさもある・・・という裏の部分も出さないとたぶんこれは面白くないんじゃないかっていう話になったんですよ。
そういうところまでぶっちゃけないと、きっとこの本の魅力にはならないんじゃないかというそんな感じになりまして、タイトルにあるような話になったという感じでした。

●なるほどですねー。福岡って東京よりちょっとブームが遅いんですけど、2002年から去年くらいが福岡でいうそのカフェブームのピークだったんじゃないかと思うんですね。で、今年福岡にもカフェの専門学校が出来ましてカフェをやりたい人がこれからたくさん出てくると思うんです。で、カフェをやりたいっていう方の中にはやっぱそういうとこだけしか見てない方もいらっしゃると思うんですね。実際働いてみないとホントはキツイよっていうのは分からないと思うんですが、そういう事がこの本の中に凝縮されてると思ったんです。
■あーなるほど。
●だからまずカフェを志す者は読んで頂きたい本だな、と思ったんですよ。やっぱり辛さとかオーナーさんやスタッフの方の葛藤があったりとか、仲悪くなったり仲良くなったりとか、人間模様がすごく詰まってて、読み応えがすごくあったんですよね。
■ありがとうございます。それがフィクションじゃなくて本当に実際にあった訳で、起こった事も実在の事だっていうのがね、すごく大事な事だなぁって思ったんですよねぇ。
●ドキュメンタリーですよね。
■そうですね。ホントにそうですよ。
●まさに「警視庁24時」よりもリアルなドキュメンタリー!(笑)
■ホントそうですよ!「25時」くらいですよね。(笑)
●あはははは(笑)。僕は結局「デザートカンパニー」ってお店は行った事がなかったんですけど、当時はそりゃーすごかったんでしょうね。
■やっぱりアジアンデザートっていうのが今はすごく流行ってますが、ある意味先駆け的な存在だったんですよね。最初は本にも書いてありますけど、結構ノリで始めた店だったわけですよね。(笑)そのノリがその後のカタチを生んだっていうそのプロセスもまたすごく面白いって思ったんですよ。
●なるほどー。ぶっちゃけ、この本売れたでしょ?(笑)
■そうですねー。これはかなり売れましたね。(笑)
トーキンカフェ
●さて、この「デザートカンパニー」についての本を出される前に、「眺めのいいカフェ」という本を出されてまして、こちらもすごく面白かったんですけども、いろんなお店のオーナーさんから聞いた話に山村さんなりの味付けを施した本なんですが、これ読んでたらもう東京・大阪から金沢とかですね、当然福岡はソネスさんも載ってますし、いろんなカフェがある訳なんですけど、これらのカフェには当然行かれたんですよね。
■そうですねー。その時は東京に限らず地方のカフェにすごく惹かれてた時期だったんですよ。東京がある意味飽和状態になってカフェが増えてきた時に、このソネスさんをはじめ地方のカフェっていうのがすごく何かこう僕にとっては拠り所みたいな感じになった時期があって、しょっちゅう何かと言えば地方のカフェを廻ったり遊びに行ったりしてたんです。
●地方のカフェとかそういう情報源はどこから来るんですか?
■えーとねぇ、僕がこういう仕事をしてる事もあってカフェのオーナーさんとかカフェが好きな人なんかが知り合いにたくさんいるんですよね。で、大体カフェが好きな人達っていうのは「あそこのカフェ行った?」っていうのが合言葉のようになってまして
●あーなるほど。一種のステイタス的なところですよね。
■そうなんですよねぇ。「知ってる?」っていうそういうところから情報ってまわってくるんですよね。
●そうですよね。
■実際行ってきた人達の話がきて、僕も行ってみたっていう話がまた繋がっていって、まぁ正しいクチコミだと思うんですよ。
●まあ、そうやって全国のカフェを回られたわけなんですけど、ここで僕が山村さんの本を読んでからスゴーク行きたいお店についてお聞きしたいんですけど。
■ほう!
●金沢に「サロン粋」ってあるじゃないですか。スゴーク行きたいんですよ!写真とか見てコメント読んだだけでも僕の琴線に触れちゃったんですよ。でも金沢って遠くてなかなか行けないんですよ。「サロン粋」ってどんなお店だったんですか?
■あのねえ、オーナーさんが岡田さんっていう方なんですけど、その岡田さんの情熱を情熱のままに終わらず、きちんと形にすることを一生懸命やろうとしているお店ですね。ちゃんと自分のビジョンを持っているっていう。自分自身カフェのオーナーと言うよりはプロデューサー的だっておっしゃってたんですけどね。たまたまカフェという形だったんですけど、本来人と人を繋げるという気質を持った方なんですね。だからそこに企画性があったりとか、コンセプトがちゃんとあったりとか、強く現れているカフェですね。だからゆるいカンジというか、庭に置かれた石ひとつとってみても意味があるといいますか。だから適度な緊張感があるんです。
●いいですね~。建物の写真とか見てもシャープなカンジというか、すごく計算された感がうかがえるんですが、でも河原でお客さんに答案用紙を配ってテストさせたりとかの面白い一面もあるんですよね。僕、「そうそう、この感覚だよな~!」って共感してしまったんですよ。計算の中でも遊びがあるっていう。だからお客さん自身もすごく楽しんでお店に行っているんじゃないかって。だからすごく行きたいんですよねえ。あの雰囲気の中に埋もれたいっていうか。(笑)
■今はちょっと形態が変わってカフェの営業はほとんどしてなくて、夜の営業がメインなんですけどね。岡田さんは粋だけじゃなくて違うお店を計画されてまして、ビル1棟借りてイベントスペース的な事を兼ねた空間を作ってらっしゃいますね。だからそれができた時にぜひ行って欲しいですね。
●そりゃ僕のカフェワークの集大成として金沢ツアー組まないと!(笑)金沢って行ったことないんですが、京都っぽいっというか、建物も現代と昔ながらの建物がマッチしているという街みたいですね。
■新竪町っていう目貫通りの一本奥になるんですけどね。どちらかというと人もまばらですし通りも賑やかな感じじゃないんですけど高感度なお店がちょこちょこあるという街ですね。
●ちょうどこの今泉みたいな感じなんですか?
■そうそう、そうですね。
●なるほど。山村さんは他にも色んなカフェをまわられたんですが、山村さん的にここはヒットだったっていうカフェってありますか?
■いくつかありますよー。場所は?
●場所は問わずと言うことで。(笑)
■そうですね、東京であればひとつありますね。そのカフェに居たいっていう理由で引っ越したというくらい好きなカフェがありまして。
●ほうほう!
■それは駒沢にあるnicoっていうカフェなんですけどね。「眺めのいいカフェ」にも載ってますけど。ここはもう自分の思うカフェというものの最高峰ですね。
●ヒトコトていうとどんな感じなんですか?
■いい意味でほったらかしてくれるカフェ(笑)
●あはははは!(笑)でもそれは理想な所ありますよね。
■カフェって元々みんなに世話されるんじゃなくていい意味でのほったらかし具合が和めたりとか心地よくなれるっていうのってあると思うんですよ。だからサービスのバランスというか過剰にならず、さりとて何も気にしてない訳じゃなくて、ほったらかしてるフリをしてちゃんと見てるっていうバランスがすごくよくとれたカフェですね。
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